公開時に色々と話題に上がった「8番出口」の映画版を見ましたので、感想を書きます。

Amazon Prime 「8番出口」

※小説版は読んでいませんので、映画の感想のみとなります。

※映画はほとんどサブスク配信で見ますので、絶対に劇場で見た奴しか認めない!!とか、音響などの設備面の感想が見たい方はニーズに合いません。

※基本的には内容に触れるためネタバレします。

全体的な感想と評価

非常に話題になったゲームの映画化、主演が二宮和也氏で、演出上のネタバレを見る方のトラウマなども考慮して注意喚起するなど、公開当時にも話題がたくさんありました。

私はこういったタイプの視点のゲームは酔ってしまうので、ゲーム実況の方のプレイで何度か拝見済です。(それでも20分も見られませんでしたが……)

8番出口のゲーム内容としては、一人称視点で「ループする地下鉄の通路で間違い探しをする」というものです。

通路上で「最初と違ったこと(異変)」があれば通路を引き返す、見逃して進んでしまうとまた0からやり直し……というのを、8にたどり着くまで繰り返すゲームです。

それほどストーリーがあるゲームでもないという印象であったため「どんな脚本で映画化したのか?」はとても気になっていました。

ゲームの内容やホラーとしての形を極限まで崩さず、1つのテーマ性を持たせて脚本を作り、更に「目を逸らせないホラー」という仕掛けが非常に効いていました。

やぎ
やぎ
すっげえなこれ!!良作!!

ネタバレあり!やぎの個人的感想

冒頭の「電車に乗ってイヤホンをしている主人公」「赤ちゃんの泣き声でイヤホンをとる」「少し離れた場所のその赤ちゃんの泣き声に怒鳴りつける中年男性」「それを見ないフリをしてイヤホンを戻す主人公と、他の人もみんなイヤホンをつけて見ないフリ」という流れ。

うおーーーーーーー本当に”今”を切り取った現代劇や………!!

電車を降りると主人公の恋人と思われる人からの電話がかかって来て、「別れようと思ってたのに子どもが出来ていた」という内容。病院に行くと返事をしながらもお互いに関係を見直して子どもを産み育てるには迷いがありそうな会話……

これは無視出来ない!!静かな修羅場!!!!

人にぶつかってスマホを落として画面を割りながら「一旦切って地上に出てからかけ直したり、止まって落ち着いて会話をする」という選択肢をとれない、という一連の流れも現代!!今!!という感じ。

ながらスマホは今はマナー的な意味でもNGではありますが、今後は法規制やウェアラブルに切り替わっていってこういう場面は珍しくなるかもねえ……という気持ちでした。

このながらスマホシーンが良いのは、ながらスマホに夢中になっていていわゆるホラーの異界に突っ込んでしまうというところです。

この「あり得る!」という見る側に怖さを感じさせるのがホラー作品はめちゃくちゃ大事なので、思わず「良い~~~~!」てなっちゃいました。

ゲームではないから主人公が迷い込んでから最初に戸惑って自力でルールを探し出すのも、その前に「これおかしくない!?天井の蛍光灯おかしくない!?」という分かりやすい異変だったり、「写真撮ってもあかんのか…スマホ無効や……」や、「えっ異変なの!?そういう精神攻撃もあるの!?」と、見る側もゲームを知っている人は異変を探し、ルールを知らない人には理解出来るように作られている演出も大変良かったです。

そして恋人と話して「戻りたい」と主人公が思ってしまってからの、それが結局異変の罠だったという絶望のシーン。

やぎ
やぎ
分かるよおおおおお酷いよねこの罠はさあ!!そりゃ狂っちまうよ!!

明らかに異変でありBGMや効果音も見る側に強烈な不快感を与えながらも、それでも納得感のある混乱と叫び、荷物も置いてっちゃう。いや荷物は置いてくな、それは大事なやつよ!!!!

ここから男の子が登場してゲームを知っている方も「えっ異変じゃないの!?えっ!?」というところから脚本の味がどんどん出て来て仕掛けが素晴らしいなあ!!と思いました。

そしてずっと繰り返し歩いてくるもはや怪異としか思えないおじさんにも迷い込んだドラマがあり、最終的に異界に飲まれて怪異に喰われて取り込まれたんや……となったり、その後子どもと合流した主人公との対比も見事でした。

おじさんは子どもに優しい対応をしますが、端々に暴力性が見えて態度を取り繕っているのが分かり、最終的に男の子に怪我をさせて置いて行ってしまった。

対して主人公は最初は印象が悪いというか、一度絶望したのもあると思いますが、まんま「子どもにどう接していいのやら」が態度に出ているものの、子どもの様子を見、何があったか確認し、危険そうな異変があれば抱き上げて逃げる。

保護をするというのもありながら、それでも「年齢に関係なく助け合おう」としているのが分かるんですよね。

やぎ
やぎ
その基本的な善性があれば全然父親になれるやでぇ……

そして再度「異変」として出て来る恋人と、その恋人を「ママ」と呼ぶ男の子。

男の子の見えているものは、主人公とは違うのかもしれないんですよ。主人公には恋人に見えているけど、男の子にはママに見えているのかもしれない。

でもここで「未来の可能性」が混ざって、その男の子は主人公の子どもなのでは?というのが見る側の想像として芽生えます。

怪異になってしまったおじさんは「ガキに会う日だった」

子どもは「パパを知らない、分からない」

主人公が父親になる覚悟を決められなかったことがあの彷徨うおじさんという未来なのかもしれないし、おじさんは全くの他人である可能性ももちろんある。

パパを知らない子どもという結果は、おじさんと主人公どちらにもかかっており、男の子はおじさんの子どもかもしれないし、主人公の子どもかも知れない。

まさしく可能性が交錯していて、主人公の父親になるか否か?なってもいいのではないか?という迷いや揺らぎを表すものになり、更にそれが小さくはあるけれど希望にもなる。

この脚本のないゲームに、この「父と子」のテーマを持って来て、見る側の想像力をかき立てるのが素敵な感じがしました。

分かりやすいながらも普遍的で、この現代においてこの迷いへの共感もすごくあるというのが正直なところかなと思います。

ずっと恐怖の演出ではありますが「赤ん坊の鳴き声」が全編に横たわっているものの、この主人公の心情によって場面によって意味が変わってくるんですよね。

ここで子どもとのやり取りを通して絶望から少し立ち直った風な主人公。

やぎ
やぎ
チーズの乗ったピザいいね、私も食べたい!!おめえらもいっぱい食べな!!

そしてその後の公開当時に異例とも言われる注意喚起のあった、サイレンが鳴って通路の奥からまさしく津波とも言える濁流が流れて来るシーン。

転んだ男の子を迷わず戻って助けて、自分が流されても男の子を通路の表示看板に乗せて励まし続ける主人公。

このシーンは確かに注意喚起が必要で、それでもこの映画には必要なシーンだと思いました。

苦しみと喪失と、そして救いがこのシーンに詰まっている感じがします。

だからこそこのトラウマを持つ人には本当に辛いし、見る側の感情はめちゃくちゃになって湧き出すし、この後にあるシーンに効いてくる。

この後に流れる夢のような「主人公が父になって男の子が自分の子どもとして存在している」というシーン。主人公が「戻りたい、絶対に戻ってみせる」ときっと思ったであろうシーン。

ここが明けた時に、見る側としては「絶対に脱出して」「間違えないで」「助かって」「ちゃんと父親になろうよ」という気持ちにさせられるし、脱出をした瞬間にものすごい安堵感に包まれるんですよね。

脱出した時のじわっと戻って来る現実感と、本当に脱出出来た…?という不安感も本当に良い。何の変哲もないうんざりするような混雑した駅というつまらない現実の、どうしようもない安堵感が「自販機で飲み物を買う」という行動ですごく良く分かる。

二宮和也氏は本当にこういうリアルさが「演技が……上手え……」になります。

映画としては脚本も演出も非常に良くてこれだけでもきちんと成立はしているのですが、この「どこにでもいそうな一般人」という凄まじい演技力がなければここまで「うわあああああすごい」ってならないと思うんですよね。

日本でほとんど一番人気のアイドルグループのアイドル!(※元)と言っていい人のはずやのに何でここまでオーラを消した一般通過モブみたいな演技が超上手いんですか???逆に日本一のアイドルやからってこと???すごいよお本当に……

最後の「逡巡する」間の長さも本当に良かった。誰だって怖いけど、大抵の人はああいうのを助けたいと思っているし、主人公は8番出口の体験が残っているから現実でああいうのに立ち向かって行けたのかもしれない。

一番最初のシーンに完全に戻って来ていて、「無限ループでは!?」という不安感も覚えつつ、あそこで立ち向かって行ったことで分岐を間違えず本当に脱出出来たのかも!?!と思える最後で余韻もあって最高でした。

おわりに

確かに怖くて「ホラー映画」というのは間違いないです。

しかし、きちんと脱出出来るオチも含めて「超安心できるタイプのホラー映画」という珍しいジャンルではあったかなと思います。

脚本テーマも良く、変な引き(実はまだ終わっていなかった……というやつ)もなく、余韻も良くて、人に薦めやすいホラーでした。

ホラー鑑賞会などで誰かと複数人で見る時など、ちょうど良く怖くて面白く、視聴後も怖さを引きずらないのでかなり良いと思います。(超個人的な感想です)

おすすめです。